コンポストレポート
写真1.バスタブミミズコンポストby Good Life Permaculture
コンポストのワークショップを行うにあたり、自分の中で疑問がふつふつと沸き、その時分自身の問に答えるべく実践、調べものをした結果を、レポートのように、ここにまとめようと思います。この文章は、「このコンポストが正しいのである」という答えを提示するものではなう、コンポストを作ろうと思っている人の考える材料になればと思って書いています。まず、それぞれの手法の長短に入る前に、コンポストの要素についてまとめます。
写真2 三角形ボックスコンポスト
- システム思考としてのコンポスト
まず前提として、調べてゆく中で感じたことは、コンポストは「システム」である。ごみ収集の行政サービスは、決まった曜日に、雨だろうが晴れだろうが行うが寒いから来ない、このごみは気分じゃないから集めないというごみ収集はない。しかし、コンポストはさまざまな要因に左右される。
そのため、デザインの目的や置かれている場の文脈などによって、基本原理に忠実になりつつ、変化するシステムの一つの要素としてのコンポストの見方をすることで、作る人自身も柔軟に考えることができるのではないだろうか。
- コンポストの定義
「有機性資源、廃棄物を好気的条件の下で、微生物の働きにより分解した肥料や土壌改良としての機能を持つ固形物」。コンポストは、「微生物による燃焼」作用。おがくずなどを積んでおくと燃える。また、吹き溜まりにたまった落ち葉が熱をもって分解されること。この熱は、微生物の呼吸熱である。
- 微生物
微生物には、大きく分けて中温菌、高温菌、腐敗菌などがいる。
コンポストは「微生物による燃焼」といわれるだけあり、空気が必要である。嫌気(空気が入らない状態)ではなく、好気(空気が入る状態)であることによって、微生物が仕事をする。腸チフス、サルモネラ菌、大腸菌などは、60℃以上の熱に30分耐えられず、好気発酵の過程で死滅する。高温菌には、アンモニア酸化古細菌なども存在し、アンモニアを分解する微生物も存在する。腐敗か、堆肥かは、コンポストを水の張った瓶に10日ほどおいて、臭いでテストするという方法が、橋本※参考文献1、以下出典省略)の試験方法だそうだ。
- コンポストのプロセス
有機物の分解によって、祖灰分(食品を燃やして残る灰)の増加、全炭素(呼吸によって酸素から、炭素を使い二酸化炭素が放出されるため)の減少、窒素の増加(CN比の増加)炭素と窒素の増加率。※有機物の窒素が大事といわれるが、純粋な窒素で存在するのではなく、CN比として、窒素量が多いものが存在する。※炭素率が5~10に鶏糞や、豚糞など、150におがくずなど。セルロース、ヘミセルロース(炭水化物、植物細胞の壁)が減少する。また、アンモニア酸化古細菌などの働きにより、糞便等のアンモニアも分解される。また、揮発性脂肪酸、アンモニアは熱によって蒸発する。どうやらアンモニアの分解や、岩石などからミネラルを植物が利用できるようにするのは、地上に酸素がなく、ほとんどの生命が活動できなかったころから生きている古細菌(アーキア)の役割のようだ※参考文献2。
- 4つの要素
橋本によると、窒素、炭素、微生物、ミネラルという4つの要素とそのバランスが重要だとあげられている。
【炭素】もみ殻、おがくず、竹チップ、そば殻など
【窒素】生ごみ/糞など
【微生物資材】米ぬか/完熟たい肥/落ち葉などの土着菌
【ミネラル】壁土/花崗岩質、安山岩質の山の土など
このほかに「間隙率」という、素材の間の空気がどれだけあるかということも重要であり、例えば炭素資材のもみ殻や、もみ殻が炭化した燻炭、また竹炭などが間隙率に作用する。
「水分率」も重要である。水分量が40%でないと発酵は始まらず、逆に70%を超えると腐敗することが多くなる。
参考文献
1.橋本力男『畑でおいしい水をつくる-自家製有機堆肥のすすめ』北星社、20112.中井裕、大村道明、勝呂元編『コンポストの化学‐環境の時代の研究最前線』東北大学出版会、2015
写真3 コンテナボックスコンポスト
コンポストあれこれ
僕自身、コンポストのイメージとしては、学生時代に学校に豚舎があり、そこで生ごみを分解するコンポストの機械が稼働していたのがまず原体験としてあります。いま思えば、山などで使われるそば殻やおがくずの攪拌式のコンポストと同じく、微生物資材を入れて、ヒーターで温め、金属の円形の攪拌する仕様になっていたのを思い出しました。かなり粉っぽくなり独特のにおいがしたことは、今でも覚えています。実践、実際に見聞きしたコンポストについてパーマカルチャーの視点も交えつつ、ここにまとめてみます。
【ミミズコンポスト‐藤野友人宅、タスマニアにて】
まず知ったのは、エコビレッジ制作をしている友人のところのミミズコンポスト。液肥がとれるように高くなっていて、ミミズたちが活動している様子を覚えている。ただ、ミミズたちが増えていくだけではなく、そのコンポストを友人がかき混ぜ「こいつが増えるのだよ」といって活発に動く小さな白い虫をつまみ上げたのが、印象に。それは、アメリカミズアブというハエの幼虫で、増えることでミミズが住みにくい環境になるとのこと。
写真1のバスタブコンポストは、西洋のバスタブが細長いことから、あのような長細いボックスを作ることによって、ドレン(廃液がでてくる管)が工夫なく作れているというアップサイクルのデザインです。
【米ぬかコンポスト‐木枠、屋外】
自分でも、実践したものとして、屋外に蓋つきの木枠で米ぬかコンポストを制作。米ぬかの方は、玄米を精米することが多かったため、入手に困らなかった。発酵熱がかなり上がり、しっかり分解をしてくれているという手ごたえがわかりやすいこのコンポスト。しかし、臭いがかなりでること、粉っぽくなること、生物を寄せることが難点でした。コンポストだけではなく、鶏がいたため、発生するアメリカミズアブの幼虫を食べてもらうこと、だんだんと固くなった米ぬかの床は、にわとりの床材にしていた。組み合わせによっては、箱と米ぬかだけあればできる簡単なもの。
【三角形ボックスガーデン】
写真2の三角形のボックスガーデンの方は「開放系」のシステムのため、いろいろな菌類、虫や動物が入ってきて、そこで生存競争や淘汰がおこる。観察していると、好きなものがあるか、供給量があるかでミズアブが増えるか、ミミズが増えるか変化する様子。雨にさらされ、地域の生態系にもさらされているため、良い堆肥をつくるというよりも雑草、生ごみを集積して処分する目的が重視されている印象。キエーロなどと比べて、シンプルで圧倒的にコストが安いのが利点。
【コンポストバック】
流行りのコンポストバック、購入してつかってみましたが、これはなかなか持ち運びができるのがよく、結局は屋外に置いておくことになるものの、台所に持ってゆき、生ごみを入れることが予想以上に便利。説明書ではミズアブについてかなり言及しているので、使用しているうちに起きるヒューマンエラーか、入れるものにすでについてしまっているかということが起きるかもしれませんが、構造上虫が入る隙間が無いようになっているのも優れもの。こちらも、良質な堆肥のクオリティを求めず、生ごみを減らすという目的で使うのに適している。
ているものよりもコストをかけたため、野ざらしで生ごみ処理だけでは忍びないと結論。
【コンテナボックスコンポスト】
写真3、橋本力男さんの考案しているのが、コンテナボックスのコンポスト。換気と液肥がでてくるところを金属の網をつけて、ポリカ中空構造版で覆い、金属のフレームをつける構造。かなりDIYなれしてホームセンターで適切な資材をみつけることができないと、金属の切断などが入るため、キエーロと違う道具が必要に。規格では75リッターのコンテナボックスでしたが、自分は45リッターの扱いやすいサイズで試すことに。
観察しているとアメリカミズアブは、早速やってきて網のすきまから産卵していたので、2重蓋にする工夫が必要な印象を受けた。また、これらのコンポストで生産されるものは「1次発酵」のコンポストの種として定義しており、コンテナバックでの「2次発酵」が必要としている。それには、雨のかからない屋根のある空間と、定期的な切りかえしが必要であり、その過程を経て、良質な堆肥が生産できるとのこと。空間がないとそこまでできないのが、ネック。先述の4つの要素の物を入れ、炭素資材はもみ殻ベースで、アパートのベランダで実践中。
【キエーロ】
写真4.行政で推進されているキエーロも作成。図面や写真を見て気になったのは、スタイロフォームの断熱材がスコップなどで削れることや、どうしても生ごみが直接スタイロフォームに触れること気になる。そのため内側にも板を張ると、30キロ近くまで重くなってしまったのがネック。DIYする資材、技術の要求度も高い。
友人でも、キエーロを作成してから、その中にバケツを入れて使用するという方法をとっている人もいて、キエーロそれ自体が生ごみ処理機とするよりも、「小さな移動型温室」をつくって、そこにコンポストのバケツやLFCコンポスト、もしくはトン袋で2次発酵させてつかうなど、マルチファンクションを持たせて使うのが、パーマカルチャーらしくていいかなという結論に。断熱材に板材、ポリカの中空構造版で作成し、野地板も厚めの材を使った。
写真4.改造版キエーロ/ミニ温室
〇まとめ
一人暮らしで、アパートのベランダであれば、45リッターのコンテナボックスが一番使いまわしの良い印象。ちょっとしたカフェや、雑草取りをしなければならない庭があるのであれば、三角形コンポストで、積み上げてどんどんいれてゆくのが良い手応え。キエーロ型の温室は、苗を育てたりすることなどあると便利な印象。
このようなそれぞれの要素をシステムとして捉えて、その長短を考えるスタイルで、コンポスト、パーマカルチャーのワークショップをしたいという人がいたら、ぜひお問合せください。