パーマカルチャー

パーマカルチャー「何が誰にどう役立てるのか」

パーマカルチャーは、持続可能な文化を作るという、パーマネントとカルチャーの造語です。とはいっても扱う領域が、建築、人間の習慣、生態系など幅広いので、せっかくいい源泉であったとしても「何が誰にどう役立てるのか」がぼやけてしまうので、言葉にひとつづつ対応させる形で、明確にできたらと思います。

ここで扱う言葉は、一見パーマカルチャーではないものも積極的にいれます。まずは「持続してきた文化」として、日本庭園も入れるとわかりやすいため冒頭で記載します。なぜわかりやすくなるのかというと「住んでいる人が手間をかけなくてよい(外注すればいい)」システムとして比較対象としてあるとパーマカルチャーの輪郭がはっきりしてくるので、入れておきました。

・日本庭園=自然と触れられて、お庭屋さんか自分が管理する庭

※自分で木を管理できる、お庭屋さんに手入れしてもらえる人向け。時間がない人。

日本庭園は、食べられない庭です。一方で、空間を管理し続けるという点ではとても合理的であり、またそこは野生の鳥や生き物たちの暮らしの場ともなっています。特に、お庭に石が多用されていると、雑草が生えてこない作りになっているので、管理の手間がかかりません。松などの厳しい環境に生きられる木もあり、木々もほおっておいても強いです。そして、四季折々の花に触れるには絶好の庭です。ただ、食べられません。

・ガーデンファーミング=庭先で作る野菜

※自由にできる土のある庭のある人

農地や市民農園ではなく、庭で野菜を作ります。そのため、主食は作れません。庭がある人向けと書いていますが、日本庭園がすでにある場合はすべてが有効面積ではありません。日本庭園は、庭師さん、もしくは自分が定期的なメンテナンスを行えるという前提で20~30年スパンの動的平均を前提に作られた庭です。そして、そして、ガーデンファーミングのよりも管理の頻度とテクニックを求めてこないのが、今の日本庭園で、ガーデンファーミングは、手間がかかります。

・ガーデンオーチード=庭で果樹を育てる。

※木が植えても邪魔じゃないぐらいの庭がある人

木が植えられる家庭であれば、ミカンやキンカンなどが植わっています。パーマカルチャーと言わなくても、日本ではよく見られる光景です。オーストラリアでは、ぶどうやリンゴ、ブラックベリーやナッツなどが庭に植わっているのをよく見ました。もちろん、オーストラリアの居住面積が、人口に対して区画がとても広く「自由に使える庭が広いことはとても贅沢なことだ」という日本的な文化ではありません。むしろ、手に余る庭をどうしようかという悩みがある住宅に住む人も多いので、庭で果樹を育てる文化がやりやすい背景があります。

・エディブルフォーレストガーデン=食べられる森をつくります。

※広い木を植えていい場所がある人向け 農家、農業に適応可能

森と庭の果樹の違いは、たくさん木があり、生態系としての連鎖がおきるという違いがあります。たくさんの木を植えていい場所があれば、森を作れます。僕も実践しているミカン園などがこのような形です。それぞれの植物の習性、自然農と有機農、雑草の見立てや害虫防除、不耕起栽培の技術論が詰まった方法です。

・コミュティガーデン、地域チキン=みんなで野菜や卵を育てる

※地域に場所がある人、私有地を開いている人とつながっている人

みんなで畑や、鶏を育てます。その際には、コミュニティというものが発生するので、役割分担がうまれそこのデザインも必要となります。また、育った分をどのようにシェアするのか、責任を持つのはだれかという「組織」のデザインが必要になります。

・体験農園、農泊=サービスとして野菜を育てたりする体験を販売する

※農業もしくは農家さんなど収穫物のある人

受け手にとっては、コミュニティガーデンや、個人の庭と違って、収穫や土地への責任を他者にゆだねるサービスとなります。サービスの受け手は収穫物を生産するという責任から免除される代わりに対価を払うということが特徴的です。都市でパーマカルチャーをやってみたいという人が求めているのは、意外とここかもしれません。「生産する主体になりたい」のか「生産する体験をしたい」のかは、問いとして持っておくととてもヘルシーです。逆に農業や体験を提供する人にとっては、入り口設計から、ニーズのある人に届く工夫を考えるうえでデザインが必要となってきます。

・建物のDIY、廃材、自然素材の建築の設計=建物を建てる

※これから拠点を作る人、庭を作るうえでの道具の小屋や鶏小屋を作る人

ガーデンファーミングから、農泊や鶏、ヤギなどのスケールになってくるといよいよ構造物が必要になってきます。小さな構造物から、大きな構造物まで自分で作ることができるようになること、もしくは人に頼んでやってもらうにしても自分で修理できることは、重要になってきます。一方で、建築などのマネジメントは習慣ではなく、最初に一発作る工程が終わるとその後は鶏や果樹のようにルーティンの作業が発生するものではなくなります。その代わり、補修、メンテ、購入を検討する古民家の見立てなどでは、専門的な知識は必要な場面が多くあります。

・エネルギー、水などの自給

※すでにシステムができていて、エネルギー、水のニーズが明確な人

太陽光パネルや雨水修水なども、建築の一部になります。建築と違うのは、システムを組んだ後も、習慣として、必要量に対してのインプット、アウトプットをコントロールし続けなければならないということです。そして、太陽光パネルだけでオフグリッドするのであれば、冷蔵庫、クーラー、全自動洗濯機なしなど質素な暮らしが求められることもあります。一方で地下水に関しては、日常で使う分には枯渇の心配はそこまで必要ないかもしれません。

・ランドスケープデザイン=どこに何を配置するかを決める

※多様な要素を使ったランドスケープのデザインを考えている人

ここまで述べてきたようなWASPA、つまり水、動物、構造物、植物、導線のデザインを地図に落として考えることは、ランドスケープのデザインとなります。日本の場合、外構と内装に分かれて建築やいえのデザインを考える場合が多いですが、自分自身の暮らしのランドスケープを見直す時には、重要となります。特に、ガーデンファーミングをやろうという時に、どの場所に何を置くかを考えるときに、使用します。

・アセスメント=多角的なものの見方をする

※ランドスケープデザインをする前の人、移住する際に場所を比較検討する段階の人

実際にランドスケープデザインをする前に、そもそものアセスメントの知識があることが重要です。日当たり、水の流れ、土の質や土地の勾配、人間の習慣やニーズなどを落とすことはとても重要です。

・ホリスティックマネジメント=全体が活かしあうつながりになるかを可視化する

※自分の暮らしの質や価値を考えなおしたい人全般

ランドスケープをデザインするうえで、どのようなコンセプトで、どのような暮らしが自分にとってのクオリティオブライフを高めてくれるのかということを、一覧にしておくことは重要です。そして、各要素がどのような形でつながっているのかを可視化することも重要になってきます。アセスメント、ランドスケープデザインだけだと、変化が起きたときにどのように対応するのかということの意思決定まで通して考える力は弱いとも言えます。そのため、ホリスティックマネジメントを表にしたものがあると、立ち戻る原点となります。


一つ一つの積み上げとしてのパーマカルチャー

ここまで日本庭園から始まって、ホリスティックマネジメントまでパーマカルチャーが、誰にどう役に立てるのかを書いてきました。これは「性質」を抜き出してどれが良いということではなく、むしろ足し算に近い形でとらえていただけると正しい輪郭をつかめると思います。

パーマカルチャーを学べば誰かが、自分のお家を建ててくれて、野菜を作ってくれて、石油危機になったとしてもいいコミュニティを生きられるのかというと、そういうものではありません。

まず、自分のお家が日本庭園の庭だったとしたら、それがどういう「機能とシステム」で、なんの目的に向かって動いているかをしること、そして次に小さくていいから一部空き地を見つけてボックスを作るなり、畝をたてるなりして簡単にでも育ててみることから始まるでしょう。

そして、木を植え始めることや、家の井戸水とモーターを使う、もしくは山があるなら沢からパイプで水を引いてみることを初めてもいいかもしれません。そして、農機具を置く場所として、建築として簡単な小屋を建ててみる。こういう形でまずは要素を学んでゆくプロセスが必要です。

次に、ようやく全体感が見えてきたところで、要素間の配置を考えて、それがどのように活かしあうのか、繋がりを確かめるという抽象的な作業に入ってゆきます。そのころには、だんだんとモノの見方が鍛えられてきて、自分以外の大きさ、文脈の違う実践者のやり方を見に行って知見を得るのもいいでしょう。

そして、だんだんと始める前には気が付かなかった、生活の質を上げる重要な要素に気が付き始めると思います。そうなったときに、そもそもの全体のコンセプトの見直しと、クオリティオブライフをつなぐ形でワークショップとして紙に書き出してみるということをしながら、成長してゆくプロセスを経ていくのだと思います。

もちろん、自分の暮らし全体を改善するプロセスに、どこから入ってもいいと思います。野菜を育てる前に、そもそも自分は何をしたいのか、どういう未来を作りたいのかということを固めると、例えば、「生業」からはいるのか、「地域に入ること」からはいるのか、「建築・生態系」から入るのかそれぞれの道があると思います。

これらの焦点は、何をしたらパーマカルチャーが完成するということはないように、移り変わってゆくプロセスの中で、焦点が変化するものだと思っています。

UNITEDでは、こういったデザインのプロセスを販売するよりも、個別最適な伴走を手伝っています。特に、自然と共に生きる接点で何かをしなければならない人や、地域で自分たちの豊かな暮らしを作るタイミングの人の伴走は、自分の自然環境の見方や森のガイドの経験をフルに活かせることも多いです。どんなスケールの問い合わせでも、ぜひいつでもご連絡ください。