パーマカルチャー

パーマカルチャーのデザイン思考「前半」

1. Observe and Interact

システム思考の観察で、関連性を見ること

「デザインというのは、人と自然との調和のとれたデザインである」という言葉が、この原則をよく表しています。調和をとるためには、それぞれの要素がバラバラに存在するのではなく、特徴についてよく知り、活かしあう形で繋がることが必要となります。また、システム思考のものの見方をすると、調和がとれた瞬間の状態ではなく、時間がたつにつれ人間のクオリティオブライフが高まり、生態系が豊かになってゆくという「進化」してゆく持続可能なシステムこそが良いデザインといえるでしょう。その一歩目としての「資源を見つける目、システムを捉える観察」と「活かしあうつながりを作る考え方」を持つことが第一の原則です。

2. Catch and Store Energy

エネルギーを、捕まえて、ストックする仕組みを重視すること

パーマカルチャーのシステム思考で重要視しているのが、エネルギーの収支です。エネルギーの種類としては、太陽光、葉緑体へと継がれる生態系の中のエネルギー、熱エネルギー、水のエネルギーなど、「フロー」と「ストック」で把握することができます。窒素と炭素、栄養なども土壌という形で蓄えられているという見方をします。現代をエネルギーの「フロー」と「ストック」の目線で見ると、化石燃料という地球環境がストックしてきた資源を使い続け、人口も増え続けている局面です。エネルギー価格の上昇や、温暖化の影響によるエネルギー使用の限界、日本では少子化の問題など、エネルギー上昇が無限に続くという世界観ではなく、いかにこのエネルギーや人口が減ってゆく中でエネルギーを捕まえ、ストックし豊かな生活を築くかということが重要になるという第二の原則です。

3. Obtain a Yield

自分自身の力で、生活に必要なニーズを収穫できるシステムを作ること

長期的に森を作ることや、生態系を守ることも必要ですが、私たちには、私たちの日々の暮らしのニーズがあります。エネルギーを創るだけではなく、それを日々の暮らしのニーズを満たすために適宜使うということが、できてこそ、持続可能な暮らしは作れます。自分自身のニーズを満たすことができること、自給自足のことをセルフリライアンスと言い、自分の暮らしのものを自分で作るということです。暮らしに必要なものを、自給では限界があるので、コミュニティで賄おうというコミュニティリライアンスといい、発想もあります。外部のグローバルな食糧生産システムや、エネルギーなどを小さな規模でも自給できると、大きなシステムに災害などあった時に、自分で耐えることのできるレジリエンスあるシステムとなります。

4. Apply Self-regulation and Accept Feedback

フィールドバックの動きに注目し、理解すること。
自己抑制が効くシステムをつくること。

システム思考のフィードバックという概念は、複数の意味がありますが、持続可能性の「将来世代」ということを考えると、分かりやすいと思います。気候変動を代表する大きな地球環境システムは、生命と同じようにたくさんの要素から構成された、レジリエンスがあるシステムのため、環境の変化がマイルドになり、現在の生活のフィードバックがすぐに出なくとも、将来世代に対して返ってくるようなことがあります。また、フィードバックがループすると「強化」されることもあります。日常生活の習慣でも「悪循環にはまる」という使い方をしますが、負のフィードバックの流れを抑制することのできるシステムを作り、好循環がまわり自分自身で進化するシステムを作ること、またその因果関係を観察し、よく理解することも原則となります。

5. Use and Value Renewable Resources and Service

持続可能な資源とサービスをつかい、それに価値を見出すこと。

持続可能な資源は、意外に身近なところにあります。最も大きな持続可能な資源は太陽光です。洗濯物を乾かすのに、乾燥機が普及していますが、天日で干すことは昔から行われているサービスの享受だといえます。乾かす対象を洗濯物ではなく、果実などにしたいと思い立ったのであれば、DIYでソーラーフードドライヤーを作ることもできるでしょう。また、雨水なども直接飲むことはできなくとも、水資源であり、生えている木々も熱源や調理の資源として、少し前の時代は活用していました。これらの資源を積極的に活用しようと思うと、ソーラーフードドライヤーと同じように、雨水タンクを作ることや、薪ストーブを導入するなど、サービスとしての価値を積極的に見出し、日々に取り入れる発想と習慣が重要になります。

6. Produce No Waste

資源や機会の無駄を作らない仕組みをデザインすること

この原則も多義的な言葉です。まず一つ目に、システムの中で無駄になってしまうものが出ないようにすること、二つ目に、要素が別々になっていることによって、機会や場所のロスが出ないようにすることです。無駄についてわかりやすい例が、汚染物質であり、パーマカルチャーの創始者であるビル・モリソンは「システムの要素の中で、ほかの要素の生産性に寄与しない物質」と定義しています。畑の中で問題にされる害虫なども、野生の鳥や糞や屍骸も土壌になれば栄養となるわけであり、ほかの要素の生産性に寄与しているといえるでしょう。そうすると、課題は組み合わせ方や守り方であるのではないかという発想の転換につながり、有機的なフレームワークでデザインをすることができます。