パーマカルチャー

パーマカルチャーのデザイン思考「後半」

7. Design from pattern to details

パターンから細部へとデザインする

パターンは、モノの形のパターン、ランドスケープのパターンという意味合いと、デザインのプロセスの段取り、生態系の発展の「型」のような複数の意味合いを持つ言葉です。大きな森のような菜園をデザインするにあたっては樹種などの詳細よりも、そのランドスケープからデザインするということや、逆に家や小屋、もしくはシンボルなどの中心部をZone1として、周囲に展開してゆくというゾーニングというものの見方もこの原則です。生態系の発展の「型」とは、荒れた土壌から草地、先駆種の植物から森が形成され、最後には極相林へと森が変化してゆく「遷移」と呼ばれるパターンがあります。この大きな自然界のパターンに逆らわずにアグロフォレストリーをデザインするという発想もよく用いられます。

8. Integrate rather than segregate

バラバラの要素ではなく活かしあうつながりを持たせる

生態系のシステムは、それぞれの要素がすべてほかの要素の生産性に何らかの形で貢献しているシステムです。わたしたちの思考は、それぞれの要素に物事を分解したり、一つ一つの要素を抜き出したりして、解決しようとしていますが、それぞれの要素一つ一つがほかの要素の生産性に貢献しているという全体的なアプローチこそが、全体にかかわる問題の解決には重要になってきます。持続可能性なシステムのデザインとして、それぞれの要素が必要なニーズを満たして、大きなシステムに貢献するという視点だけではなく、システムそれ自体が、変化に対応して適切なパターンを取り入れ、フィードバックに応える視点が必要となります。ただつながればいいということではなく、一つ一つの要素が多機能性を持つことや、一つの重要な役割を担っているものが、多くの要素のサポートを受けているというつながり方も重要になります。

9. Use small and Slow solution

小さくゆっくりである解決策を選ぶ

システムの中で改善するポイントを試すときに、この原則は有効です。最も小さなシステムの介入によって、最大の成果を上げられるアイディアを思いつく可能性が高くなります。持続可能性という大きな問題に対しても、大きて早い解決策を求めてしまいがちですが、一人の人間のスケールで効率よく働くシステムを作ることなら、始められます。一人一人が小さな持続可能な暮らしを目指して、コミュニティで生活に必要なものを自分たちで作ることや、それが地域内で循環する仕組み、スモールビジネスを支えあう活動が、草の根から広がることは、結果として大きな変化をもたらすでしょう。それこそが、持続的で民主的な社会を作る解決策への、小さく、ゆっくりである第一歩です。

10. Use and Value Diversity

多様性の価値を見出し、その力を使う

一つのものが多機能性を持つという「マルチファンクション」と多様な要素で、一つの重要な機能を支える「レジリエンス」の2つが、多様性の価値として語られることが多いです。自然界は、多様性のシステムであり、その一つ一つの存在が、ほかの存在の生産性に寄与しているという関係性です。また、その関係性の網の中で強いものだけが生き残るのではなく、持続する関係性が多様な形で存在しています。多くの要素が無秩序に存在し、混沌とすることも、混乱することもなく、それぞれが利己的なふるまいをするにもかかわらず、生命の進化や豊かさに寄与してきた歴史があります。生物の多様性も、文化の多様性も今の時代に岐路に立たされていますが、これまで築かれてきた文化と自然の多様性の中から、それをただ賛美するのでも、踏襲するでも、そのなかから今の時代の課題を解決する力としてデザインしてゆくことが重要です。

11. Use edges and values the marginal

周縁部、境界やエッジの価値を見出して使う

自然界や文化のエッジは、多様性をはぐくむ場所として機能してきました。渚や干潟などの陸のシステムと海のシステムの境の場所や、文化的な交易の拠点や、中央の文化から外れている場所は、核心の原点となることがあります。また、表土もエッジの一つといえます。地球の岩盤の一番表面の部分ですが、その中に生物をはぐくむ力や、森を作る力が詰まっています。いろいろなところに要素と要素が隣接しているエッジを見出すこと、また生産性がないと思われて見捨てられている土地や、都市など暮らしから遠方の土地、手つかずの自然や、余白の空間の中など「周縁部」と名付けられている場所でこそ、縛られず自由に創造性が発揮できるような可能性があります。

12. Creativity Use and Respond to Change

変化に対して、創造力を用いて対応すること

このプリンシプルには、2つの意味があります。一つは、変化を意図的、協力的な形に利用できるように仕組むこと。もう一つは、私たちのコントロールできない、影響を与えられないスケールのシステムの変化に対して、想像力を使って適応、対応すること。パーマカルチャーの重要なキーワードとして、レジリエンスという言葉があります。例えば、災害や環境の変化によって暮らしのシステムが危機に瀕してしまうときなどに、どれだけバックアップや代替手段があるか、コミュニティでその危機にしなやかに対応できるかという力のことです。常に変化してゆく時代、自分のシステムがどれだけ創造的に変われるのか、また生態系の遷移のように変化できるものを、その中にどれだけ抱えられるのかということも、重要です。

プリンシプルの定義について

パーマカルチャーのデザイン思考である、プリンシプルについて、UNITEDでは、David Holmgren “PERMACULTURE-Principle and Path Way beyond sustainability-“ Holmgren Design Service,2002と、Costa Georgiadis “COSTA’S WORLD Gardening for the SOIL, the SOUL and the SUBERBS”  ABC books,2021の2冊を主に参考にしています。特に、パーマカルチャーの定義、プリンシプルの定義をすることに関しては、Costaの以下の文章に共感しています。

多くの人がそれぞれの言葉でパーマカルチャーの定義を何年もの間しようと試み、またそれぞれの試みは、人々にその本質を届けようという想いと共にあったのだ。それは、悪いことでは、決してない。逆に一つの単純化され、解釈の幅が無い定義に固めてしまうことは、その本質に反する結果となってしまうのではないだろうか。

パーマカルチャーについて書かれたものをパーマカルチャーの「文学」とホルムグレンが述べていたことが僕の中ですごく腑に落ち、パーマカルチャーを語る言葉の多様性もそれぞれの文体として存在していいのだということを感じました。