パーマカルチャー‐ハビット、コンテキスト、エシックス、エレメント、デザイン
パーマカルチャーのワークショップを行う上であまり注目されていないにもかかわらず、非常に重要な点を書いておきたいとおもいました。特に、モノベースのワークショップを開催するようになってから、期待されることとの間でギャップがあることを常に感じてきました。
「モノをつくる」以前にするべきことが、特に多くあり、この5つの要素への理解が、重要だと感じます。
コンテキスト(気候、歴史、文化、生活習慣、社会課題)
土地や場所、自分たちの文脈や要素を有効にアセスメントができるのか。どういった文化で人々が暮らし、またどういった目的でその土地や家が利用されてきたのか、それはどのようにアップサイクル、リノベーションするポテンシャルがあるか、見定めることが必要だと思います。
ハビット(生活様式、行動変容、ニーズ、幸福)
自分自身の行動様式の変容ができるのか、です。例えばコンポストや太陽光発電、また天ぷらカーなども、ペット1匹飼うのと同じぐらい知識と日々かける時間が必要であり、果樹や野菜を育て自家消費するのであれば、相当数の料理のレパートリー、また採れすぎた時に工夫して使い切る知恵や、渡せたり売れたりする周囲の人とのネットワーク、またそれにかける時間など、生活様式の変化がどれだけあるのか、棚卸しできることが必要でしょう。
エレメント(土、水、植物、動物、構造物、動線)
知識と経験を積み上げることが必要だと思います。構造物ひとつとっても、DIYできるようになるまでにも、どの道具買ったら良いか、などやることがたくさんで、どれも職人芸の世界に通じています。樹木や草花も、品種だけではなく、根系の世界や、遷移の中での役割なども、一つ一つの樹種に精通してゆくと全く見える世界が変わってきます。とはいえ全てできるようになるべきではなく、むしろ自分の生活が幸福であるためには、どこまでやって、どこからが手を出さない範囲か決められることが、とても重要です。
エシックス(倫理)
コンセプトともいえますが、とても重要です。世界観ともいえます。それこそ、上に出てきた、野菜を配るのか、ある程度は土に返すのでよしとするのか、どのエレメントを取捨選択するのか、農法でいえば、自然農をするのか、そのほかのインテンシブガーデン(有機農含め有機物を畑に入れる手法全般)をするのか。また、狩猟、野生動物の殺生を積極的にするのか、ベジタリアンになるのか、自給のための農をするのか、販売農家として生きてゆくのか。コミュニティを作ってサービスを売る側になるのか、コミュニティガーデンに参画する形にするのか、そういったそもそもの事、コンセプトこそゴールを描くうえでもっとも重要で、何度も鍛えなおす必要がある部分です。
デザイン
できたものだけが注目されがちで、キーホールガーデンやコンポストがパーマカルチャーのデザインだと思われがちですが、コンテキスト、ハビット、エレメント、エシックスを統合するのがデザインです。自分の場所に適したデザインをどう描くのか学ぶためだけでも十分な時間と知識も必要になります。また、モノベースでコンポストトイレを、フォレストガーデンということではなく、そういったエレメントがどうやったら自分の暮らしを豊かにしてくれるのか、本当に小さな変化で、自分自身や社会が大きく変わるのは何なのかということが、全体のデザインを描くうえで最も重要なことだと思います。
この5つがきちんと嚙み合った形に統合するのがデザイナーの仕事であり、パーマカルチャーのデザインを学ぶ面白いところだと思っています。